インクを濃くする。その①
今日はインクの濃縮です。
先日、銀座にある万年筆専門店のEuroBox
www.euro-box.comに行ったときのこと。デスクに置いてあったインクが殊の外お気に召した方がいて、「このインクは何?」と聞いておられました。インクはPelikanのロイヤルブルーで、インク壺のフタを開けて放置しておいたものとのこと。少しずつ水分が揮発して濃くなったのでしょう。通常のロイヤルブルーより色が濃く、かつ少し粘度が上がっているような気がします。これと比べると、通常のロイヤルブルーは水っぽく感じます。おもしろいので、自分でも作ってみようかな、と思いましたが、長いこと、インク壺のフタを空けておくなど、蹴っ飛ばして(あるいは引っかけて)ぶちまけて下さいというフラグが立つこと請け合いなので、もっと手っ取り早く濃くする、すなわち濃縮してみることにしました。
濃縮とは、溶液の溶媒量を減らし、溶液に占める溶質の割合を高めることです。うーん、回りくどいww。要は溶媒(通常は水ですね)を飛ばして溶質の濃度を上げるということですね。濃縮法はかなりいろいろあって、いわゆる加熱濃縮が一番手っ取り早く、かつやりやすい方法です。加熱することによって、溶媒である水を強制的に蒸発させ濃縮します。が、これには大きな問題があって、加熱によって成分が変質する可能性が考えられます。よって強く加熱しない減圧蒸留による濃縮を試してみました。減圧蒸留によって効率よく濃縮するのはエバポレータが便利ですが、インク量が少なく、温度調節しやすい方法で行ってみました。
まずはどこの家庭にも必ず1台はあるダイアフラムポンプ(白いヤツ)とこれも一人一つは持っている真空デシケータを用意します。
ロイヤルブルーインクをスクリュー瓶に小分けします。
瓶の半分ほどまで入れました。
これをデシケータ内に入れます。
真空デシケータに耐圧ゴム管でポンプをつなぎます。
ここでポンプでデシケータ内部の空気を抜いて真空に近い状態にします。減圧されることによって、水の沸点は下がり、低い温度で沸騰し始めます。沸騰によって水分が気化するわけです。
効率を上げるため、少しだけ加熱してみました。インクですので少なくとも人肌程度で成分が変質したり分離したりしないと見なして、40℃程度に加熱します。これもよく見かけるデシケータ用加熱装置です。
このまま、1時間ほど放置しました。
そうして完成したのがこれ。
上の写真と比べて液量がかなり減っているのがわかると思います。実は少量ですが、油断して突沸して吹き出したため、その分も減っています。が、それを差し引いても1/3くらいになっています。4枚目のアルミ箔は突沸防御用だったんですが、勢いがよくてアルミ箔は飛ばされてしまいました。
その後、デシケータ内が水分で曇るほど蒸発していき、上のような濃縮インクができあがりました。
ちょっとカメラの関係で色の濃淡の差がわかりにくいのですが、けっこう濃くなっています。気のせいか、青みが濃くなったような? 粘度も上がっています。
もしご希望の方がいらっしゃいましたら、お分けいたしますよ。
次は別の濃縮法を。もちろん、ご家庭にあるもので誰でも簡単にww